本レポートは、暗号資産市場における直近の資本行動および取引構造の変化を体系的に把握するため、ビットコインとイーサリアムの価格変動性、ロング・ショート比率(LSR)、先物建玉残高、資金調達率、清算データの5指標を分析しています。これらを多角的に組み合わせることで、市場の現状を網羅的に可視化し、価格トレンドや投資家心理、リスク状況を総合的に把握します。以下では、7月15日以降の各指標の最新動向を項目ごとに解説します。
CoinGeckoのデータによれば、7月15日~28日、暗号資産市場は高値圏でのレンジ推移が続き、BTC・ETHともに直近高値を突破した後、横ばいレンジ入りとなりました。短期のモメンタムは鈍化したものの、全体としては強気構造が維持されています。
BTCは7月14日に123,000 USDTで史上最高値を記録後、調整局面入りとなり、119,000 USDT付近で何度も攻防を繰り返しました。テクニカル面では短期移動平均線とMA30が密接に収束し、MACDも一時ゴールデンクロスとなったもののモメンタムは減速、出来高もピーク後に徐々に減少し、価格追従意欲の低下がうかがえます。ただし、115,000~116,000 USDTゾーンの強力な買い支えで、主要サポートはしっかり維持されています。【1】【2】【3】
ファンダメンタルズ面でもビットコインのエコシステム拡大が続き、年間オンチェーン取引高はVisaを超え、BTCのグローバルなユーティリティとしての地位が強まっています。オンチェーン流動性のタイト化や機関投資家の保有比率増も、BTCを「デジタルゴールド」かつ基軸担保資産へと押し上げています。Merlin Chainの2.0アップグレードは利回り強化・クロスチェーン機能拡充も志向しており、さらなる実需拡大や長期価値再評価の起点となるでしょう。
ETHはこの2週間、より一貫した上昇基調を示し、3,550 USDT付近から短期移動平均線に沿って堅調に上昇、7月28日までに4,000 USDTに迫りました。テクニカルは構造的に良好で、MACDの拡大・移動平均線の強気並びも継続、出来高もじわじわと増加し市場参加も増えつつあります。
まとめると、7月中旬以降、暗号資産市場は高値圏でのレンジ消化局面となっています。BTCは新高値後、モメンタム・出来高がともに減退しながらも強固なサポートとファンダメンタルズ成長が長期見通しを支えています。ETHは主要テクニカルライン沿いに順調な上昇が続き、投資家関心の高まりとともに4,000 USDT到達目前です。目先のブレイクアウトエネルギーこそ限定的ですが、主要銘柄は健全な上昇トレンドを維持しており、エコシステム成長や機関資本の拡大とあわせて、強気基盤が損なわれていないことから、今後のレンジ消化後には再び上昇波動が生じる可能性が示唆されます。
図1:BTCは直近2週間、高値圏でレンジ推移し119,000 USDTで抵抗。モメンタムは減速。一方、ETHは4,000 USDTに向けて着実な上昇で短期パフォーマンス回復が鮮明。
ボラティリティの観点でBTCは全体的に緩やか&安定した値動きを継続、大きな急変はわずかな取引日に限定。主要事業者が明確なリズムで売買しトレンド期待値も高いことを示しています。対してETHは、7月中旬以降、特に7月16日と25日に何度も急激なボラティリティ上昇があり、市場の方向性への見解相違や短期売買活発化を反映しています。
両銘柄とも変動性自体は過去水準で中~低レベルですが、ETHの直近の急変は市場心理の敏感化を象徴。短期ニュース・資本流入による値動き拡大を受けやすくなっています。もし出来高とボラティリティが連動して拡大すれば、ETHの方向性ブレイクを引き起こす可能性もあり、この局面が持続的トレンド形成となるか要注目です。
図2:BTCのボラティリティは安定的推移、ETHは7月中旬~下旬に複数回急騰し短期売買センチメントの強まりと方向不透明感を映し出す。
この2週間、暗号資産市場は高値圏でのレンジ推移が続きました。BTCは最高値更新後、モメンタムと出来高が縮小し横ばいレンジへ。ただ下値サポートは堅調でテクニカル構造は維持。ETHは主要移動平均線に沿い堅調な上昇で4,000 USDT間近となっています。
ボラティリティの面ではBTCの安定性が目立ち、ETHは大きな変動幅増加が鮮明――市場乖離・短期投機が強まっています。短期モメンタムの鈍化はあるものの、構造的強気相場観は揺らいでいません。今後価格・出来高両方の合致が進めば目先の新トレンドブレイクも期待されます。
ロング/ショートテイカー比率(LSR)は、積極的な成行買い・成行売りのボリューム比較を通じて、市場センチメントやトレンド強度を測る主要指標です。LSRが1超なら、ロング(成行買い)の量がショート(成行売り)を上回り、市場に強気バイアスがかかっていることを示します。
CoinglassデータによるBTCのLSRは、価格が高値圏レンジを維持するなかで低下傾向が続き、1を繰り返し割り込み、7月28日には0.90を割りました。これは高値圏での強気確信の低下を意味し、テクニカル構造が堅調でも市場熱量が冷え短期資本は慎重方向にシフトしています。全体として、新高値後のLSR低下は短期楽観の後退・投資家のポジション縮小や様子見行動の増加につながっています。【4】
ETHのLSRは価格トレンドと明確な乖離を示しています。7月15日以降着実に4,000 USDTへ上昇しても、LSRは中旬からじわじわ低下し0.95前後、一時0.90も下回りました。これはトレーダーの慎重姿勢や、上昇持続性への懐疑的な見方を反映。弱気的LSRが続き、短期的にはショートポジションの仕掛け需要が強まっていることを示し、価格と市場心理のギャップが浮き彫りです。
総じて、BTC・ETHはいずれも高値圏を保ちながら、LSRの低下が市場の迷いと慎重な資本投入を示します。短期的にはLSRの反発が上昇トレンド継続の鍵となるでしょう。
図3:BTC LSRは高値レンジで低下、買い需要後退が明確。
図4:ETH LSRは弱気域で推移、資本参加の慎重さを如実に反映。
Coinglassデータによると、BTC・ETHの先物建玉残高は高水準かつ高い変動を保っています。以前はレバレッジ資本が積極的に参入していましたが、現在は様子見または高値圏でのポジショニングが増えています。7月中旬以降、BTCの建玉残高は85~88億ドル帯を繰り返し試すも目立ったブレイクには至っていませんが、直近1カ月高値圏は維持。ETH先物建玉残高は安定増加し、7月中旬に500億ドル超、7月28日には約570億ドルで年初来高値を更新しています。【5】
特に7月後半は、ETH建玉残高の増加ペースがBTCを上回り、将来的なETHへのレバレッジ意欲が際立っています。この動向はETHの現物価格着実上昇と投資家心理の回復と符合します。
総合的に、BTC・ETHともにレバレッジ資本の活発な動きが続き、リスク選好も回復傾向にあります。ただし価格・建玉とも高水準にあるため、今後ボラティリティ上昇時には集中清算リスクも高まるため、建玉・清算動向の変化に注意が必要です。
図5:BTC・ETH先物建玉残高は高水準維持、レバレッジ取引も活発化。ETH優位の成長トレンド。
過去2週間、BTC・ETHの資金調達率はゼロ付近で小幅推移し、相場の強気・弱気勢力が拮抗。価格上昇に対する投資家の積極的な追随は限定的で、レバレッジ資本の大規模流入もみられません。価格は高止まりしていますが、資金調達率が大きく上昇せず、現物・低レバレッジ中心の上昇が主導。この安定感は短期バブルリスクの抑止にも寄与しています。
トレンド面でETHの資金調達率は数回マイナス域に入り、特に7月24日~26日に-0.015%近くまで低下。ただ素早く回復し、大規模清算や急反落は発生せず、市場耐性が示されました。BTCの資金調達率は安定かつ変動抑制傾向で、機関投資家や長期投資家の選好も続いています。対してETHはやや高ボラ性を見せ、市場期待や投機色の違いが垣間見えます。【6】【7】
全体的にファンディング環境は相場上昇を強く後押しはしていませんが、明確な抵抗もありません。資金調達率がプラス圏で定着、出来高急増が伴った場合は上昇モメンタム加速のサインとなり、今後の重要な注目点です。
図6:BTC・ETH資金調達率はゼロ周辺で推移、市場は慎重姿勢でレバレッジ拡大は限定的。
Coinglassによると、過去2週間の暗号デリバティブ市場の清算構造は全体にバランスが保たれ、大規模連鎖清算や強制清算の波は発生しませんでした。ただし短期変動期には局所的な清算増加も観測。ロング側で7月18日・23日に大きな清算が発生、特に23日は1日でロング清算が6億3,000万ドルと期間中最大となりました。これは高値圏でのレバレッジロングが激しい振るい落としを受け、強気モメンタム維持下で上昇ペースが減速したことを意味します。【8】
一方でショート清算は限定的で、7月18日の価格急騰以外は全期間通じて低水準。売り方の慎重なポジション構築、「天井売り」狙いのショートも大規模な損切りとはなりませんでした。
全体的に現状の清算動向はシステミックリスクを示さず、高値レンジ内での健全な資本フローとポジション競合が続いています。断続的なロング清算は過熱感の冷却や弱気筋の整理に寄与し、次の強気モメンタム形成の素地を作ります。もしボラティリティの縮小と清算頻度の低下が進めば、次の上昇局面の土台が一層強まるでしょう。
図7:7月23日にロング清算6億3,000万ドルでピーク、高レバレッジ強気ポジションへの圧力が顕在化。
構造的強気市場と慎重な資本流入が並存し、暗号資産の上昇基盤は揺るぎませんが、高水準でのレンジ入りにより短期センチメント変動が拡大、追随買い・逆張りショート双方のリスクが上がっています。市場リズムの分断が進む中、投資家には高度なテクニカルツールによる取引タイミング・リスク管理がより一層求められます。
この背景を踏まえ、次節ではMACD(移動平均収束拡散法)指標――定量的テクニカル分析で最も広範に利用されるツールの一つ――に着目。高値圏レンジや循環相場局面でのトレンド転換検出や、実践的な売買シグナルの運用効果を詳しく検証します。中心となる「MACDトレンド戦略」を主軸に、主要トークンと異なる相場環境下でのバックテストを行い、トレンド追従性・ドローダウン抑制・中間利益増幅といった適応力・一貫性を評価します。
(免責事項:本記事のすべての予測は過去データおよび市場動向に基づくものであり、情報提供のみを目的としています。投資助言や将来市場パフォーマンスの保証ではありません。投資実施の際はご自身でリスクを十分ご検討くださいますようお願いいたします。)
本戦略はMACD(移動平均収束拡散法)テクニカル指標をベースに、モメンタム転換シグナルとリスク管理を組み合わせてトレンド追従トレードを行います。MACDラインがシグナルラインを上抜けしてゴールデンクロスとなれば買いシグナルが発生し、利確・損切りの固定幅でリスクを管理、規律的なエントリー・イグジットを徹底します。特にレンジ消化後のトレンド転換点を捉え、主な上昇局面の獲得を狙います。
バックテストは時価総額上位10銘柄(ステーブルコイン除く)を対象とし、主要Layer 1チェーンや高流動性資産をカバー。多資産・多様な市況における戦略の応用力・有効性を評価し、実運用への信頼性を検証しました。
エントリー条件
イグジット条件
stop_loss_percent
)に達すれば強制損切り。take_profit_percent
)に達すれば利確イグジット。実取引例チャート
図8:SUI/USDT戦略エントリー例(2025年7月19日)
図9:SUI/USDT戦略イグジット例(2025年7月21日)
この実例で、MACDトレンド戦略のエントリー/イグジットの原理・動的リスク管理が明確です。MACDゴールデンクロスでモメンタム強化をエントリー契機とし、利確・損切りでリスク統制。デッドクロス発生時は素早く手仕舞いして過去トレンドの一部利益を確実化します。
ドローダウン抑制でも、高値圏レンジでの利益消耗を避け、トレンド終息期に規律ある防御力を発揮。MACD戦略の実運用時の実効性と柔軟な最適化余地(トレンド強度や出来高・他指標統合)も示されました。
バックテストパラメータ設計
最適パラメータ抽出のため、下記レンジで系統的グリッドサーチを行いました:
macd_fast
:8~15(ステップ2)macd_slow
:20~31(ステップ2)macd_signal
:5~13(ステップ2)stop_loss_percent
:1%~2%(ステップ0.5%)take_profit_percent
:10%~16%(ステップ5%)検証アセットは時価総額上位10銘柄(ステーブルコイン除外)、2024年5月~2025年7月の1時間足データ使用。全384通りのパターンでバックテストし、年率リターン上位5組み合わせをトップ指標としています。
評価指標は年率リターン・シャープレシオ・最大ドローダウン・ROMADで、各種市況での安定性・リスク調整後パフォーマンスを多角的に評価しました。
図10:トップ5パラメータセットのパフォーマンス比較
戦略ロジック解説
MACDラインのシグナルライン上抜け=ゴールデンクロス時、市場モメンタム強化とトレンド初動認定→即時買い注文発動。この仕組みでレンジからトレンド転換への初動を堅実に捉えます。
エントリー後は利確・損切りによる固定幅リスク管理を実施。価格が事前設定の利益・損失閾値に達すれば自動的にイグジットし、規律のある利確・損失限定を実現します。
例としてSUIは下記パラメータ:
macd_fast
=12macd_slow
=30macd_signal
=11stop_loss_percent
=1%take_profit_percent
=15%このロジックはブレイクアウト確認と固定リスク管理を組み合わせ、明確なスイング構造のトレンド市場で特に有効です。トレンド追従とドローダウン抑制を両立し、リターンの安定性も高めます。
パフォーマンス・結果分析
バックテスト期間は2024年5月~2025年7月。MACDゴールデンクロスエントリー・固定利確損切りイグジット戦略を時価総額上位10銘柄(ステーブルコイン除く)に適用。BTC・ETHの現物ガチホ累積リターンを上回るなど、モメンタム追従・リスク管理力の高さが示されました。
チャートではSUI・TRXが最も高い安定上昇を示し、累積リターン100%超を記録。トレンド初動で早期エントリー、目標利確で効率良く利益確保。SUIは2024年10月以降一貫して上昇し、2025年中盤に戦略ピークを更新、全銘柄中トップの成績です。
一方で現物長期保有では変動性が大きく、ETHは同期間中最大50%超のドローダウンを経験――高ボラティリティ市場での保有リスクを浮き彫りにしました。MACD戦略はレンジ・下落転換期に自動イグジットで急落回避、資本成長安定にも寄与しています。
DOGE・XRP等中~高ボラティリティ資産でも上昇獲得・深刻な損失回避に成功しました。
まとめとして、MACDゴールデンクロス+固定利確損切り戦略は収益性・ドローダウン制御・アセット適応力で優秀な成果を挙げ、実運用での高い有用性が示唆されます。今後はトレーリング利確や出来高フィルタ、トレンド確認指標追加で、応答性・運用効率のさらなる進化も充分見込めます。
図11:1年累積リターン比較(トップ5パラメータセット・BTC&ETH現物ガチホ)
本戦略はMACD指標に基づきエントリー・イグジットを規定。ゴールデンクロス検出でトレンド初動をとらえ、固定利確・損切りの併用でリスク統制を徹底。主要暗号資産幅広く安定したリスク管理・一貫した利益成長を記録し、特にボラティリティや転換期での高精度な反転ポイント捕捉、現物戦略超えの収益性を示しました。
バックテスト結果ではSUI・TRXが累積リターン100%超で頭抜け、SUIは長期トップリターンを実現。ETH等の保有中大幅ドローダウンも回避し、戦略の安定性・信頼性が再確認されました。
注目すべきは多くのトークンで勝率50%未満でも、規律ある売買ルールと非対称型リスクリワード設定により損失を限定し勝ちトレードを伸ばすことで着実な収益蓄積が可能だったこと。低勝率の戦略でこそリスク管理とポジションサイジングが肝要です。
総体としてMACDトレンドフォロー戦略は収益性・ドローダウン抑制・資本効率のバランスに優れ、中~高ボラティリティでトレンドの読みにくい局面で有効性が高いと言えます。今後は出来高認証・移動平均フィルタ・多時間軸共鳴の拡張で、多因子・多資産対応型への進化が期待できます。
2025年7月15日~28日、暗号資産市場は構造的強気基調を維持し、主要資産は直近高値圏でレンジ推移。テクニカル・ファンダメンタルは健全ですが、ロング・ショート比率や資金調達率、清算動向からは慎重な短期センチメント、資本流入の限定、レバレッジ伸び悩みが示唆されます。BTC・ETHとも高値圏維持のなか、市場は強気・弱気の綱引きとなり、価格はレンジ内で戦略的な売買が目立っています。
今後の相場展開は、流動性や取引構造の変化――特に出来高増・ファンディングの回復・ポジション安定がトレンド継続の材料となるかどうか――に大きく依存します。現行レンジを上抜けし、テクニカル指標強化が伴えば主要資産で上昇サイクル再開が見込めます。一方、レンジ膠着や市場意見の乖離拡大が続けば調整局面・ローテーションも視野に入ります。
この分岐点では強気基調ながら断片化が進むため、短期戦略はタイミング精度とリスク管理が必須。フレキシブルなトレンドツールとポジション管理で不確実性に対応することが肝要です。本流れの中で、MACDベースのトレンド戦略はゴールデンクロスエントリーと固定リスクイグジットで中期売買優位性を発揮。モメンタムシグナル・明確な取引ルールにより規律と執行信頼性が向上します。
バックテストではSUI・TRXなどで累積リターン150%超、ドローダウンも抑制。勝率50%未満でも非対称リスクリワード・厳格なストップ設計で安定収益を実現し、ボラティリティ環境での堅牢さが証明されました。
総括としてMACDトレンド戦略はリターン、ドローダウン抵抗、執行効率の三拍子が揃い実運用でも有効です。今後は出来高要素やトレンド強度指標、多時間軸シグナルの組み合わせで、より複雑な市場構造への適応・拡張も十分期待できます。
参考文献:
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